神生みを詳しく詮索する3

志那都比古神(しなつひこのかみ)

古事記には風の神と書いてあるので、風の神なのでしょう。日本書紀には国生みが終わった後の国土が朝霧に覆われており、それを払うために同様の神さまを生んだとされているようです。風は日を遮る雲を払うものでもあるし、農耕にとっては重要な神さまかと思います。

先に家宅六神として、風木津別之忍男神(かざもつわけのおしをのかみ)が風の神として登場しています。こちらは防風の神としたほうがいいのかもしれません。風を吹かせる神さまと風を防ぐ神さまというわけです。農耕にはどちらも重要ですね。

久久能智神(くくのちのかみ)

古事記では木の神とされています。「くく」というのは「木々」あるいは「茎」に通じるもの。特定の木をさすものではなく、木々全般の神さまと思われます。「智」は男性をさすのもだそうです。真っ直ぐ雄雄しく立つ「木」は男根のシンボルでもあるようですね。

「木」は「柱」に通じます。イザナギとイザナミが婚姻の時に回った「柱」も、おそらくは石柱なんかではなく木製の柱でしょう。日本人の住居は木と紙でできていますし、食料としても「木」からもたらされるものは多々あります。久久能智神(くくのちのかみ)は日本人とっては重要な神さまであるわけです。

大山津見神(おほやまつみのかみ)

大山津見神(おほやまつみのかみ)は山の神さまです。大山津見神は数々の神さまの親として、何度も登場します。スサノオが八俣大蛇(やまたのおろち)退治の際に出会う櫛名田比売(くしなだひめ)の両親、足名椎(あしなづち)と手名椎(てなづち)が大山津見神の御子です。また、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の妻となる石長比売(いわながひめ)と木花之佐久夜毘売(このはなさくやひめ)も大山津見神の御子になります。他にも登場しますが割愛。

鹿屋野比売神(かやのひめのかみ)またの名は野椎神(のづちのかみ)

オオヤマツミの妻神。野の神。「かや」というのは「茅」または「萱」のことで、屋根材や飼肥料などに利用されてきた草本の総称だそうで、個別の植物の名称ではないみたいです。「茅葺の屋根」とかの「かや」ですね。古代では建築の材料として重宝されていたのでしょう。野からもたらされる惠の姫神なのでしょう。

別名の野椎神(のづちのかみ)は聞き覚えのある名前です。「のづち」といえば「ゲゲゲの鬼太郎」にも登場する有名な妖怪ですから。

外見は蛇のようだが、胴は太く、頭部に口がある以外は目も鼻もなく、ちょうど柄のない槌(つち)のような形をしている。深山に棲み子ウサギやリスを食べる。時には人を喰うとされた。近畿地方・中部地方・北陸地方・四国地方を中心に伝承されているもので、シカを一飲みにする、転がってくる野槌に当たると死ぬ、野槌に見つけられただけでも病気を患ったり、高熱を発して死ぬともいう。昭和中期から未確認生物として知名度をたかめたツチノコは、野槌に用いられていた呼称のひとつ(槌の子・土の子)だったが、昭和40年代以降はマスメディアなどで多用された結果、野槌のような伝承上の特徴をもつ蛇の呼称も「ツチノコ」が定着していった。

野槌(2018年9月21日 (日) 13:32 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

ということで、「のづち」が妖怪の名前であり、ツチノコが別名であったことは自分的にはよく知られたことであったのですが、世間一般ではどうなんでしょうね。あまり知られてはいないのかもしれません。「のづち」が姫神であったということのほうが驚きです。

「のづち」という妖怪は野の精霊です。野の神さまたる野椎神(のづちのかみ)が後に「のづち」という妖怪に変化していったとしても不思議ではないですね。

次回は大山津見神と野椎神が生んだ神さまです。

天之狭土神(あめのさづちのかみ)

「山野によりて持ち分けて生みたまふ神の名は」と古事記にはあります。「持ち分けて」と「天之」を考えますと「山道」みたく思います。「狭」はせまいの意ですから、山に分け入る路、天に続く道ということでしょうか。「狭土」を「砂・土」と読んでいる方もいるようです。

国之狭土神(くにのさづちのかみ)

天之狭土神とは対になっている神さまと考えられますが、天之狭土神は日本書紀には登場しないそうです。だから対とは違うとの見解のようですが、古事記では対の形になっています。対だとすると、平野部の「道」ということになりますが、どうなんでしょう。やはり「砂・土」と読んで、農耕民族にとっての重要な「土」の神さまなんでしょうかね。

国之狭土神は日本書紀の国狭槌尊(くにのさつちのみこと)と同じ神さまと考えられます。

国狭槌尊(くにさつちのみこと)は、主に『日本書紀』の天地開闢の段に登場する神である。別名国狭立尊(くにのさたちのみこと)。神代七代のうちの一柱である。

国狭槌尊(2018年10月15日 (月) 9:59 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

神代七代の一人でもあるし、日本書紀では何度か登場するようです。重要な神さまなのかもしれません。古事記では一度しか登場しません。

天之狭霧神(あめのさぎりのかみ)

山の霧の神さまでしょうか。こちらでも「狭」の字が使われています。山で霧に出会うと、人は道を見失ってしまいます。道を見失うことは、死を招くことにもなります。また、霧は自らを隠してくれることもあります。敵から追われていた場合などは霧はみかたにもなるでしょう。

何にしても「狭」の字をどう解釈するかですね。

国之狭霧神(くにのさぎりのかみ)

こちらは、「国」のバージョンです。同じように平野を覆う霧は農耕にどんな影響を与えるのでしょうか?雨とは違って、あまりいい影響は無いような気がします。

霧害(そうがい)

主に、本現象による、農業で生じる被害をいう。日射の長期間遮断による温度低下と光合成の阻害により、作物等の生産量が減少する。日本では、岩手県三陸地方のやませや北海道太平洋岸の海霧が代表例。対策として、根釧原野では防霧林(多くは防霧保安林)を設定して、林帯で霧粒の捕捉を行っている。

(2018年10月17日 (水) 6:00 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

農耕民族にとっては「霧害」は神のなせる災いですね。温暖な四国地方にもあるのでしょうか?

五里霧中という言葉がありますが、意味はこんなです。

五里霧中

後漢の張楷が五里にわたる霧を起こし、自分の姿をくらます道教の秘術「五里霧」を好んで使ったという、中国の『後漢書(張楷伝)』にある故事から。 五里四方にわたる霧の中に入ると方向を見失うことから、物事の様子が全くわからず、どうしていいか迷うことも意味するようになった。

語源由来辞典

有名な言葉の語源が道教の秘術「五里霧」だとは意外ですね。

天之闇戸神(あめのくらどのかみ)

「闇戸」が問題ですが、「闇」は光の無い状態のことです。

創世記

はじめに神は天と地を創造された。地は混沌としており、闇が淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをうごいていた。神は言われた。「光あれ」。かくして光があった。神はその光を見て、良しとされた。神はその光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼んだ。

聖書の「創世記」を引用するのはどうかとも思うのですが、「闇」を「夜」と解釈するのは日本の古代においても同じようなものだと思います。よって「夜」の神さまとします。迫りくる「闇」の神さまですね。

次に「戸」ですが、これは入り口のことでしょう。水戸は港、山戸は山裾の開けた土地、闇戸は夜の入り口。夕闇というところでしょうか。

結論。夕闇の神さまということで。

国之闇戸神(くにのくらどのかみ)

夕闇は平野部にもやってきます。闇は恐ろしいものです。早々に農作業を切り上げて自宅に帰らなければなりません。闇を恐れるのは現代の私たちどころではなかったはずです。

大戸惑子神(おほとまとひこのかみ)

字の感じからして、神隠しを連想します。大戸惑女神(おほとまとひめのかみ)とは対になっているのでしょうから、こちらは男神なのでしょう。これまでは天と国が頭についていましたが、こちらは子と女が違うだけです。

「惑」は「まどわされる」という意味ですから、自ら迷うのとはちょっと違って、何者かに迷わされるという外的な作用が意味としてありそうです。惑されて道を失うわけです。

自らの失策で山で迷子になったとしても、他人から見れば何者かに隠されたと考えたのでしょう。また、賊にさらわれて消えてしまうといったことも多かったのではないかと思います。肉親や仲間が意味も無く、突然消えてしまうことは恐ろしい神のなせる業だったわけです。

大戸惑女神(おほとまとひめのかみ)

同じく神隠しの神さま。「戸」ついているので、惑わされないように戒める意味がありそうです。

次に生んだ神~ここからはイザナギとイザナミの子に戻ります。

鳥之石楠船神(とりのいはくすぶねのかみ) またの名は天鳥船(あめのとりふね)

天鳥船(あめのとりふね)という名のほうがよく知られていると思います。少なくとも私の中ではそうなのです。なんとも、SFチックな名前です。どうしても宇宙船的な姿を想像してしまいます。

鳥というのは羽を持つもので、天使の羽を置き換えたものと考えています。天女の羽衣も同じです。天からの羽を持つ舟の神さまが天鳥船のイメージです。

別名の鳥之石楠船神(とりのいはくすぶねのかみ) を考えて見ますと。「楠」の字が入っています。「楠」は腐りにくく船の材としては最適な木材のようです。

「楠」で作られた宇宙船は想像できません。やはり、大海を航海する船のことなのでしょうか?

「鳥之石」は、鳥のように早く、石のように頑丈なというような意味合いでしょうか。太古の軍船が正解のような気がします。とすると、天鳥船は天孫族の船足の速い軍船の神ということになります。宇宙船ではなさそうです。ちょっと残念。

大宜都比売神(おほげつひめのかみ)

阿波の国そのものの神さま。卑弥呼と大宜都比売神は同じであると考えます。

火之夜藝速男神(ひのやぎはやをのかみ) またの名は火之炫毘古神(ひのかがびこのかみ)、またの名は火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)

カグツチはイザナミの女陰を焼き、生まれてきました。イザナギとイザナミの別離のきっかけを作った神さまです。女陰を焼くという表現はあからさまですが、内部からの戦火ととればイメージできそうです。

カグツチの「ツチ」は「土」ではありますが、「鎚」ともとれます。ハンマーのことです。

火之夜藝速男神の名にある「藝」は「修練によって身につけたわざ・能力」のこと、「速」は押し寄せる戦火のイメージです。内乱は夜に起こったのでしょうか。

火之炫毘古神の「炫」はひかりとか、まぶしいとかの意です。夜(たぶん新月の夜)に起こった内乱の戦火は、漆黒の闇のなか煌々と燃え上がり、すべてを焼き尽くしたことと思います。人々は恐れおののいたことでしょう。

そして「火」はすべてのものを「土」に帰します。

神産みにおいてイザナギとイザナミとの間に生まれた神である。火の神であったために、出産時にイザナミの陰部に火傷ができ、これがもとでイザナミは死んでしまう。その後、怒ったイザナギに十拳剣「天之尾羽張(アメノオハバリ)」で殺された。

カグツチ(2018年10月17日 (水) 11:33 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

カグツチはイザナギの怒りをかい、十拳剣によって殺されます。そして、ここからも多くの神さまが生まれるのですが、それはまた次回に。

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